イランを本格的に攻撃してみたところ、意外に手こずったので、こんどはキューバに世界の目と支持者たちを引き付けようとしているのが、最悪の世界指導者トランプ大統領である。歴史家たちは彼をどのように描くのかはともかく、われわれはこんな手口しかない発想貧困なアメリカ大統領を、いま見たどおりに評価しておくことが歴史的義務であり同時代に対する責務だろう。英経済誌ジ・エコノミスト3月19日号はトランプ特集を組み、イラン戦争がトランプの本当の姿を暴露したと指摘している。

その特集を概説する社説は「イラン戦争はドナルド・トランプを弱くしている。そしてさらに怒り狂わせている」とのタイトルだが、いまさら言うようなことなのだろうか。同誌はイランへの攻撃に強く反対していなかったと思われるし、今回のイラン攻撃に大きなファクターであるイスラエルの策動については、この社説ではまったく触れていない。最近のジ・エコノミストはどういうわけかイスラエルに甘いので、いまさら驚かないが、バランスが悪いことは確かだろう。
とはいえ、分かりやすくトランプの3つの「強さ」を、イラン戦争がすべてダメにしてしまったという指摘をしているので、ここで簡単に紹介しておく価値はある。まず、トランプの3つの強さとは何か。第一に、世界の現実に与える能力であり、それはアメリカの国力を背景としたものといえる。第二に、トランプはその影響力を同盟・友好国に遠慮なく使うことができる。そして第三が、アメリカ共和党への圧倒的な支配力だといえる。しかし、今回のイラン戦争を無理やり始めたことで、それらの強さは失われつつあるというわけだ。

ジ・エコノミストより
第一の現実への影響力だが、イラン攻撃を始めてまもなく、トランプはこれでイランの核兵器は不可能になったと主張し、最近もイスラエルがその後の爆撃や暗殺の継続によって、もうイランの核武装は出来ないとうそぶいている。しかし、同誌のみるところ、ドローンはまだかなり持っているようであり、濃縮ウランについても問題の400キログラムは依然として、アメリカ=イスラエルは確保できていないのである。
第二の同盟・友好国への影響力だが、周知のようにホルムズへの軍艦の派遣の事実上の強制は、ものの見事に拒否されている。また、アメリカとイスラエルが行ったイランの石油のハブであるカーグ島への攻撃で、石油によるイランの資金調達を断ったかもしれないが、そのいっぽうでホルムズ海峡の同盟・友好国のタンカー通過はいまも見通しがたたない。これも新しい攻撃をするのだが、それ以前の攻撃の成果が生かされないままに終わっているのだ。
ジ・エコノミストより
第三の米共和党への圧倒的支配については、今年11月の中間選挙で大きく構図は変わるだろうと思われている。第一の強さ、第二の強さを失いつつあるなかで、共和党の支持を確保するというのは難しいだろう。すでに共和党内部でもかなりの批判が起こっており、MAGAグループの少なからざるメンバーが、あまりにも矛盾だらけの軍事・外交に愛想をつかしつつある。
こうしたトランプの窮地を如実に示しているのが、キューバへの新たな圧力や脅威を振り回していることだろう。キューバの政治や経済がうまくいっていないのは確かだが、だからといってトランプが介入すればよくなるものではなく、これまでの米キューバ政策のデタラメさについては、キューバの政権がいちばんよく分かっている。たとえキューバをアメリカ艦隊で包囲したとしても、あるいはキューバの軍事施設をすべて爆撃して潰したとしても、それでキューバが豊かで民主的になるわけではないのだ。同記事の締めくくりを以下に引用しておく。

「トランプは敵とみなした人物を攻撃したり、米民主党が支配する都市に移民局職員を派遣したりするかもしれない。また、彼は11月の中間選挙への介入すらちらつかせる可能性すらあるだろう。それは単なるパフォーマンスなのか、実際に選挙結果に影響を与えるためなのかはまだ分からない。しかし、少なくともトランプが、イランで勝利を収めるシナリオはちょっと書けなくなってきた。いまのうちにいっておこう、トランプは最悪の敗北者になりつつあると」
●X(旧ツイッター)でこの投稿にアプローチして下さった方へのお詫び Xのイントロダクション的文書のなかで、「イラク戦争」とあるのは「イラン戦争」の誤りです。1時間以内に気がつかなかったので、そのままになっています。すみません。