HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

スウェーデンでも集団免疫は効いていない;国家免疫学者テグネルすら認めている

スウェーデンの国家免疫学者アンジェス・テグネルが、今週の火曜日(11月24日)同国の「集団免疫」は新型コロナ感染をおさえていないと認めたというニュースが流れた。まず、『ザ・プリント』電子版、次に『フォーチュン』電子版が同内容の記事を掲載したが、いずれもブルームバーグのラファエラ・リンダーバーグによるもので、他のメディアの反応を待っていたが、ともかく概要だけお伝えすることにする。

f:id:HatsugenToday:20201126113457p:plain


公表されているスウェーデンのコロナ感染者数および規制強化の事実からすれば、ある意味で当然のことで、いまさらスクープというようなニュースではない。しかし、テグネルがいまになって集団免疫は効かないといっても、すでに同国の若者たちや、世界のスウェーデン・ファンは、これまでのマスクなしでコロナは大したことはないという生活習慣を改めることは難しいだろう。

f:id:HatsugenToday:20201126113549p:plain


まず、テグネルの発言を紹介しておく。「集団免疫の形成は難しい。私たちはいまのところコロナ感染をゆっくり進めさせるような、国民のなかに免疫があるという兆候は見ていない」。また、同国健康福祉局のトーマス・リンデンは「治療および集中治療が必要な患者が増えている。数カ月後にはワクチンが手に入るから、もうコロナに気をつけなくてもよいというような事実はない」。さらにステファン・ロベーン首相は「人びとの健康と生命がいまも危機にさらされている。その危機はさらに高まっている」と国民に向かって叫んでいる。

 これまでスウェーデンのコロナ対策については何度も書いてきたので、いまさら同じようなことを書くのは気恥ずかしいほどだが、日本には集団免疫が感染を止めてくれるという誤った認識が広がっており、さらには、日本人にはすでに集団免疫があるなどという荒唐無稽な説が一定の支持を得ている。くどいのを承知で、「集団免疫で感染をストップできるといったスウェーデンでも、そんな兆候すらない」ともう一度いっておきたい。

f:id:HatsugenToday:20201126113618p:plain


こういうと必ず、「いや、スウェーデンのテグネルはそんなことを言っていない。同国は感染を緩慢に行うことによって医療崩壊を防ごうとしていたのだ」というスウェーデンファンもしくは崇拝者がでてくる。これもファン心理のなせる業であり、実際にテグネルおよび当局はそう言いながら「第2波がきても、スウェーデンは免疫がひろがっていて、他の国よりずっと楽なコロナ対応ができる」と胸を張っていたのだ。

まず、事実を見るべきで、いまや日によっては7600人以上の感染者が生まれ、7日平均で26人以上の死者が生じており、日本に置き換えればそれぞれ94000人、320人に相当する。「方針は変えていない」といいつつも、もはや「ローカル・ロックダウン」といってよい強い規制を課しているのである。さらには、自国の福祉国家のイメージを損なわないためなのだろうか、スウェーデンは方針を変えていないというメッセージを、意図的に海外にながしてきた形跡すらある。

f:id:HatsugenToday:20201126143747p:plain


したがって、24日の「我が国の集団免疫は効いていない」というテグネルの言葉は、データを見ていたものにとっては当たり前もいいところなのだが、それなりに意味はあるといってよいだろう。続報があればお伝えしたい。最後に前出の健康福祉局のリンデンの言葉をもう一度聞いていただきたい。「数カ月後にはワクチンが手に入るから、もうコロナへの注意はいらないという事実はまったくない」。

若者たちに感染させ高齢者を隔離すれば、高齢者たちに感染させないで集団免疫ができ、経済も回せるという説は、まったくの愚説だった。若者たちが感染すれば、多少の症状が出たものは、仕事から離脱せざるを得なくなって生産力を下落させ、無症状の者は高齢者への感染経路となり多くの死者を出して、集団免疫はまったく機能しない。これが事実なのである。

 

●こちらもご覧ください

hatsugentoday.hatenablog.com