HatsugenToday

東谷暁による「事件」に対する解釈論

2023-01-01から1年間の記事一覧

ウクライナはなぜロシアを一気に放逐しないのか;プリゴジンの乱で明らかになった肝心な事

プリゴジンの反乱によってロシアの脆弱な状況が露呈したと、メディアは毎日のように報じている。しかし、それならば、なぜウクライナは一気に攻勢をかけてロシア軍を放逐してしまわないのだろうか。この謎に迫るには、まず、プリゴジンの反乱とはどれほどの…

プーチンとプリゴジンは双子の兄弟だった;ただし兄は大統領になり弟はいかがわしい商売人だった

反乱は失敗したものの、悪辣なプーチンに逆らったとして、プリゴジンを英雄視する者が増えている。しかし、間違ってならないのは、彼は大量の若者の血を叩き売って這い上がった人物だという事実である。ワグネルにしても最初は民間軍事会社で報道していたが…

プリゴジン以後のプーチンの運命;戦争継続どころか政権も危うい?

ロシアの傭兵隊長プリゴジンの反乱は、軍事組織内の対立を白日の下にさらしただけではなかった。ほかでもない、プーチン大統領による内政の手法のほころびも暴露してしまった。プーチンが直面しているのは、ウクライナによる反転攻勢の激化だけではなく、国…

ワグネルの反乱はプリゴジンの亡命で決着なのか;ロシアの内乱はウクライナ和平を遠ざける

ロシアの傭兵隊ワグネルの反乱は、創始者プリゴジンのベラルーシによる受け入れ、反乱軍への罪は問わない、反乱に参加しなかった隊員は正規軍に繰り入れるとの、一見、ずいぶんと寛容な線で落着しているように見える。しかし、プリゴジンがなぜここまで抵抗…

ウクライナの反転攻勢はいまどうなっているか;衛星データで推測する戦場の現実

いまウクライナの反転攻勢はどうなっているのか。宇宙から砲火の密度を観察することによって、戦況を推測したときのデータが公表されている。それで見ると意外なことに全体としては密度が低下しており、砲火はバフムト東方の地域に集中しているように見える…

プリゴジンはついにお払い箱になった?;彼がここまでやれた権力と根性の秘密

ロシアの傭兵隊ワグネルの創始者プリゴジンが排除されようとしている。プーチンは他の民兵組織を含めて、ショイグ国防相の指揮下に入れる方針を決めた。いよいよウクライナの反転攻勢が始まるなかで、ロシア軍組織を強化する意図があると思われる。プリゴジ…

ウクライナの反転攻勢は失敗したのか?;オーストリアの戦略専門家が分析する

満を持して反転攻勢をかけたウクライナ軍だったが、大きな成果が上がったようには見えない。それは予期されたことだったのだろうか? オーストリア軍のマルクス・ライスナー大佐は、独紙フランクフルター・アルゲマイネのインタビューに答えて、反転攻勢の緒…

ウクライナの反転攻勢で広がる「戦場の霧」;主戦場はどこか、レオパルトは強くないのか、ダムを破壊したのは誰か

ウクライナが大規模反攻に出たことは、同国のゼレンスキー大統領が認め、プーチン大統領も明確に同意している。明確でないのはどこが中心的な戦場なのか、独製戦車レオパルトが何両破壊されたのか、そしてヘルソンを水浸しにしたダムの破壊を誰が行ったかで…

ついにウクライナの反転攻勢が本格化した;ドイツ製戦車レオパルトが前線に姿をあらわす

ウクライナの反転攻勢はすでに開始されている。ドイツが供与した戦車レオパルトも、前線に登場したと報じられた。非公式ながらウクライナの兵士は同国の南東部の前線で反転攻勢に入っていると認めている。いっぽう、ロシア軍高官はザポリージャの戦線で西側…

ウクライナの今回の攻勢は何だったのか;精鋭部隊を含まない陽動作戦だが本番は間近だ

ウクライナ軍が反転攻勢を開始したとのニュースは世界を駆け巡った。ところが、肝心のウクライナ政府はそれを否定している。しかし、ドネツクでのロシア軍との衝突は間違いなくあった。何が始まって何が始まっていないのか。例によって両軍の情報戦は激しく…

世界的規模で少子高齢化が急進している;繁栄の未来を失いつつあるのは日本だけではない

日本は少子化と高齢化が急速に進み、そのため社会保障が早晩破綻するとの警告が発せられてから久しい。なかには人口動態がどうであれ、無限の財政出動をやれば破綻しないと主張する人たちもいるが、それは短期的には可能に見えても、数十年以上の長期になれ…

トランプが大統領再選でほぼ決まりの理由;叩かれればそれだけ支持が固まるメカニズム

アメリカ大統領選挙の候補者選びが事実上始まっているが、共和党はトランプが圧倒的な強さを誇っている。そんな馬鹿な、と思う人もいるかもしれないが、女性問題で告訴されたことすら「不当な弾圧」とされて、トランプには有利に働いている。どのようなメカ…

衛星データから読むウクライナ決断の時期;激しい温度上昇は大規模反攻の前触れだ

ウクライナ軍の大規模反攻が何時何処で始まるのか。いまや世界中の注目が集まっている。それは宇宙から衛星で見ていれば、本当は分かっているのではないかと思うのは自然で、実際にサテライト・データによるAI分析が雑誌にも載っている。しかし、そこには…

ゼレンスキーがG7で得た武器とプレッシャー;そして大規模反攻を迎え撃つプーチンの策とは

ゼレンスキー大統領の広島訪問は、原爆に反対するためや、岸田総理大臣に会うためではなく、G7の支援を取り付けているとの演出を世界的に行うためだった。たしかにそれは達成されたかもしれないが、その分、あらたな重い問題がゼレンスキーの頭上にのしかか…

ウクライナをNATOに入れろと言うキッシンジャー;立場を変えた現実主義者の隠れた意図

ウクライナ戦争についてのキッシンジャー発言が話題になっている。これまでの立場を翻して、ウクライナをNATOに入れたほうが、ウクライナおよびヨーロッパにとって安全保障を確立しやすいと述べているのだ。イラク戦争のさいにも、それまでは中東の政治体制…

「素顔」のないプリゴジンの正体;傭兵隊ワグネルの創始者は何者か?

バフムトでのウクライナ軍反撃が続くなかで、傭兵隊ワグネルの創始者プリゴジンについての報道が際立ってきた。彼はウクライナ軍とも取引をしているとか、いや、それは彼を失脚させるためのプロパガンダとか、プリゴジンはもう捨て鉢になっているとかの「報…

ウクライナのロシア軍4機撃墜で「本当の戦争」に突入!;次の攻撃はザボリージャかクリミアか

ウクライナとロシアとの間で「本当の戦争」が始まった。ロシア国内でウクライナ勢力と思われる部隊の攻撃により、4機のロシア軍機が撃墜された。これまでウクライナのゼレンスキー大統領は「ウクライナ領土内での防衛」を主張していたが、かなりの確率でこ…

バフムトでのウクライナの反撃は大規模反攻の狼煙なのか;「戦場の霧」の中でさらに過熱する情報戦

ウクライナはすでに大規模反攻に踏み切ったとの情報が流れている。ウクライナ東部のバフムトで小規模ながら奪還を達成しているからだ。もちろん、「戦場の霧」はきわめて濃いので不明な点は多いが、バフムトの反撃が大規模反攻そのものではないとしても、陽…

中国も長期停滞に陥りつつある?;「ピーク・チャイナ」論の憂鬱な予想

中国の経済的繁栄はピークを過ぎたのではないのか? それはゼロコロナを脱却して経済が急速に復活すると楽観したことの反動かもしれない。しかし、中国の経済成長予測は以前よりずっと控えめなものとなり、なかには成長の低下が始まるとする説すら現れている…

ロシア民間軍事会社ワグネルがバフムトを攻略か?;現代の傭兵隊長プリゴジンに翻弄される両軍

やれやれまたかというのが、ロシア国防相たちの思いだろう。ロシア民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジンは、激戦地バフムトで再び攻撃を開始したらしい。5月10日にはバフムトから撤退すると言っていたのに、ショイグ国防相が「必要な武器弾薬を送る」…

クレムリンへのドローン攻撃はロシアの自作自演?;むしろプーチンへの批判が高まる危険があった

クレムリンへのドローンによる攻撃は、自国内の反ウクライナ感情を煽るためのロシアによる自作自演だったとの説が世界中に流されている。これは論理的にもおかしいのではないのか。なぜなら、ウクライナによってロシアの中心地が攻撃され、しかも、それを阻…

ウクライナがドローンでクレムリンを直撃!;ロシアはプーチン暗殺の企てと非難している

クレムリンがドローンによる攻撃を受けたとの報道が1時間ほどまえからネット上に流れている。いまのところ明確ではないが、ロシア側の発表によれば、このドローン攻撃はプーチン大統領を狙ったものだったが、プーチンは無事でその他の損害もたいしたことは…

「平和勢力」を演じる中国の習近平;バイデンの硬直した姿勢では出し抜かれてしまう

ウクライナが大規模な反撃で成功したらどうするか。実は、これが世界の喫緊の問題となりつつある。そしていま、その大きな役割を担いそうなのが中国なのである。それは好ましいか否かは別として、アメリカがいまのような状態でいるかぎり、平和を復活させた…

ウクライナがセヴァストポリ軍港の急襲成功!;いつ、どこで、大攻勢が始まるのか

ウクライナ軍のドローンによるセヴァストポリ軍港攻撃が成功した模様で、ウクライナ側の関係者によれば10棟以上の燃料庫を破壊し、約4万トンの燃料を炎上させたという。ロシアの黒海艦隊は大打撃を受けたわけで、クリミアへの大反攻がやりやすくなったと…

習近平はゼレンスキーに和平交渉をすすめた;中国・ウクライナ首脳電話会談の真実

4月26日に行われたウクライナのゼレンスキー大統領と中国の習近平主席の電話会談は、習近平が「ロシアとの交渉」を勧めて、それをゼレンスキーが蹴ったものだった。ゼレンスキーが習近平に「中国がロシアを支援すればするだけ平和は遠ざかる」と教え諭し…

ロシア経済はまだ2年はもつとの根拠;戦争をしても経済成長するカラクリを探る

5月にはウクライナの大攻勢が始まるとの報道が行なわれている。ロシアがどのように防衛するかは不明だが、なぜロシア経済はいままで維持できたのだろうか。そして、これからも戦争が続いたとして、それを維持できるのだろうか。結論の一部を述べておくと、…

ウクライナ大反攻の前夜;たとえ成功しても戦争は終わらない理由

ウクライナの大反攻が近いことは、同国が最前線の取材を禁止したことからも推測できる(註1)。ではこの大反攻でロシアを撃破すれば、戦争に勝利するのだろうか。そうではないのだ。ウクライナのモスクワ占領はありえないとすれば、ロシアがウクライナの領…

毎日のニュースも情報戦となった;バフムトも機密漏洩も戦場のなかにある

ペンタゴンの機密情報が21歳の空軍兵士によってリークされて大騒ぎだが、ウクライナをめぐる情報戦は日常的に続いている。それはバフムトに関する日本での報道をみていれば明らかだ。いっぽうでは、ワグネルの創始者ブリゴジンが「ロシアは敗北する」「停…

最大の軍事情報リーク事件の犯人と内実;21歳の若者と漏洩情報のレベル

この10年で米軍の情報漏洩事件としては最大と報じられたが、犯人は捕らえてみれば若い米空軍州兵だった。しかも、情報関係の部署にいるとはいえ、配属されて間もないまだ少年の面影が残る21歳の軍組織でも低い地位の若者なのである。なぜ、この若者ジャ…

ウクライナのバフムト陥落寸前;中心部と補給線はロシア軍が掌握へ

ウクライナ東部のバフムトはロシア軍が中心部をほぼ制圧したとの情報が流れている。先日、ワグネル創始者のプリゴジンがSNSにビデオを投稿したときから、その可能性は高かった。ウクライナのゼレンスキー大統領も、バフムトが包囲されるなら、撤退すると…