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東谷暁による「事件」に対する解釈論

2022-01-01から1年間の記事一覧

ロシアが核兵器を使うとどうなる?;プーチンの威嚇で注目される水面下の交渉

ロシアのプーチン大統領が、部分的ながら「動員」を宣言し、同時に核使用を示唆した。部分的動員は効果が少ないとの予測が多いが、核兵器の使用について、アメリカおよび西側諸国の反応はどうだろうか。実は、アメリカおよびその同盟国は、これまでもロシア…

プーチンが予備役30万人の動員を断行;いったいどの程度の効果があるのか

プーチン大統領は予備役30万人の動員を決めた。総動員ではなく「部分的動員」だそうだが、はたして不利になっていた戦局を転換できるのだろうか。西側の論評のほとんどがそれは不可能だと指摘している。いまの劣勢は動員数より武器の性能から来ている。さ…

ロシアは核兵器を使用するのか;ハルキウ撤退で追い詰められたプーチン

ウクライナ軍によるハルキウ州での反撃が成功して、ロシア軍は撤退を余儀なくされた。そのため追い詰められたプーチンは、核兵器を使うのではないかとの予測も強まっている。はたして、プーチンはどのように考えているのか。また、使うとすればどのよう使用…

ウクライナのハルキウ奪還が意味するもの;米国高官たちの「警告」を裏読みする

ウクライナ軍が急襲的な攻撃を断行して、ハルキウ州の奪還に成功したことは間違いない。しかし、それでロシアを国内から放逐して、戦争に終止符を打つ目途がついたのかといえば、もちろん、そうではない。ウクライナ情勢について、楽観的になることを警告す…

すでにトラス首相は崖っぷちに立っている;その言動と内政・外交を分析する

英国の新しい首相となったリズ・トラスについての報道は、すでに世界中で膨大な量に達している。それは国内の経済政策やウクライナに対する支援から、これまでマスコミをにぎわせてきたスキャンダルまで、ざっと目を通すだけでも何日も、いや何十日もかかる…

コロナ・バブルの後に来る世界;IT企業の勝者と敗者から未来をのぞく

まだまだ分からないものの、オミクロン株BA.5の感染者数は、ピークを超えて少数安定期に入ろうとしている。これから何が起こるのだろうか。すでに安定期に入ったアメリカでは、驚異的な成長を遂げた新興ビジネスが没落し、リモートワークの再検討が始ま…

なぜヘルソンが重要なのか;ウクライナ戦争の行方を決める戦いに

8月28日の夜、ウクライナは南部へルソン州の奪還作戦を進めると正式に宣言した。へルソンはこの戦争において重要な拠点であることは間違いない。では、なぜそうなのだろうか。それはまず、地図を見ればわかる。100万人をこえる都市であるへルソン市を…

ロシア経済制裁の失敗が示す未来;軍事の意味が改めて問われるとき

ロシアに対する経済制裁がそれほど効いていないというのは、もう常識に近いものになりつつある。あれほど規模の大きな「経済戦争」をしかけても、ロシア経済が崩壊に向かわないのはなぜか。世界の経済紙・経済誌が次々と「失敗」について特集しているのは、…

核戦争を誘発する「ウクライナでの火遊び」;政治学者ミアシャイマーは警告する

ウクライナ戦争は南部での膠着状態のせいもあり、長期的な「千日手」に陥っていくのではないかとの予想が多くなっている。しかし、依然としてロシアが核兵器の使用にいたる危険があると警告しているのが、米政治学者ミアシャイマーである。いったいどのよう…

台湾は本当に中国の侵攻を阻止できるか;最新のシミュレーションがあぶり出す危機の真実

ペロシ米下院議長の訪台をきっかけに行われた中国の軍事演習をめぐって、直前の駆け引きの報道や台湾危機シュミュレーションが、台湾をめぐる現実を明らかにしつつある。米国が中国の台湾侵攻を阻止できるとすれば、どのような条件が必要となるか。ここでは…

中国の台湾侵攻はすでに始まっている?;ペロシ訪台を口実に準備が急速に進行中

アメリカの下院議長ペロシが台湾訪問を断行したことで、中国は台湾侵攻の「口実」を得たという説が注目されている。実は、中国はすでに台湾侵攻を決めているのだが、そのチャンスがつかめない。実際に侵攻するには何度か実際と同じレベルの訓練をしておかね…

ゼレンスキーの「正体」(6)ウクライナ軍事組織への急接近と葛藤

ゼレンスキーが大統領選挙に勝利したと報告を受けたとき、もちろんプーチンはゼレンスキーが、以前にテレビドラマでウクライナ大統領を演じたことを知っていた。「そのうち我々は会うことになるだろう」といったあとで、「ほんとうのところ、何かを演じると…

中国の「軍事演習」は台湾侵攻の序曲か;11発のミサイルは「新常態」を生み出した

米国ペロシ下院議長による台湾訪問の直後、中国は弾道ミサイルを11発も発射して、台湾と日本を威嚇した。ペロシ議長の行動の当否は措くとして、これで中国と米国・台湾との緊張関係は「新しい時代」に入ったと報じられている。この「新しい時代」とはどう…

ゼレンスキーの「正体」(5)新政権発足の半年後には贈収賄事件で紛糾する

アメリカはさらにウクライナに武器を供与しているが、最近、供与された武器がすべてウクライナ軍に渡っているかを疑う報道もあった。そんなバカなと思う人は多いかもしれないが、ロシアの侵攻が始まる以前には、ウクライナは贈収賄など政治腐敗の多い国と見…

中国経済がどんづまりに;恒大集団など不動産業の政府救済策が半端すぎる

中国政府は後退する自国経済を、もうどうすることもできなくなっているようだ。まず習近平がいまの政策一般を改めることがないかぎり、大胆な改革案を断行することができないということが基本にある。さらに、改めて注目されているのが、不動産部門のどうし…

ゼレンスキーの「正体」(4)プーチンとの直談判は空振りに終わる

7月15日にはロシアとウクライナとの穀物輸出をめぐる合意が得られ、同月21日にロシア政府系ガス会社がドイツにガスの供給を再開するとのニュースが流れた。それなら、ウクライナ東部と南部での停戦交渉も再開するのではないかと思った人がいるかもしれ…

ゼレンスキーの「正体」(3)ロシア系テレビで出発したウクライナ大統領の苦悩

7月17日、ゼレンスキー大統領が、国家保安局トップと検事総長を更迭したとのニュースが世界を駆け回った。それぞれの部署のメンバーが、ロシア軍が占領した地域でウクライナを裏切り、ロシア側に情報を流したというのだ。とくに、国家保安局(USB)の…

ゼレンスキーの「正体」(2)「オリガルヒの操り人形」から脱却できたのか

ゼレンスキーはあまりにもウクライナ・オリガルヒの支配力が大きすぎると批判し、大統領に当選した後は、彼らの違法な蓄財に切り込むと演説していた。しかし、ゼレンスキーと政党「国民の僕」が大勝利を収めると、有力なオリガルヒであるイーホル・コロモイ…

ゼレンスキーの「正体」(1)圧倒的勝利の大統領選がもたらした闇

7月9日、ウクライナ政府は、ドイツ、ハンガリー、チェコ、ノルウェー、インドなどに駐在している自国の大使を更迭した。どの国も、いまのウクライナにとって、同時にゼレンスキー政権にとって重要な国ばかりである。その理由は明らかにされていないが、ゼ…

長期戦が確実視されるウクライナ戦争;ロシアもウクライナも消耗するだけになる

ウクライナ軍は7月4日、同国東部のリシチャンスクがロシア軍に制圧されたと認めた。ロシア政府はすでに3日に、東部ルハンシク州全域を掌握したと発表していたので、ウクライナ側は認めたくない事実を認めたという形になった。もちろん、ゼレンスキー大統…

ウクライナの経済はどれほど縮小したか;西部に移動させつつ回復を試みつつあるが

ロシア軍の侵攻後、ウクライナの経済はどのような状態にあるのだろうか。世界銀行の推計によると前年比で45%縮小しており、IMFとウクライナ中央銀行の調査では侵攻前との比較でGDPの3分の1が失われたとされている。他にも様々な推計が行われてい…

ウクライナ社会の裏を読む(3)ゼレンスキーの「曲芸」が終わるとき

今年2月24日にロシア軍がウクライナ侵攻を行なったときが戦争の始まりではない。それ以前に、ドンバス地方をめぐって両国は、複雑な代理戦争を続けていた。停戦のためのミンスク合意、さらにミンスク合意Ⅱが試みられたが、双方によって破られたすえに、ロ…

ワクチンがなければコロナ死はどれほど増えていたか;医学専門誌ランセットに発表された新研究

ロシアによるウクライナ侵攻が始まったせいか、コロナ・パンデミックの報道は急速に少なくなっている。これはもちろんコロナ禍が先進国ではおさまりつつあるせいでもあるが、まだまだ油断するわけにはいかない。ヨーロッパでは、オミクロン株BA.5の感染が…

ウクライナ社会の裏を読む(2)なぜドンバス地方が火種になったのか

いまウクライナ戦争の主戦場となっているドンバス地方は、今回のロシアによる侵攻が始まる以前から「戦闘」が続いてきた地域だった。ここには親ロシア派の分離独立派がいると同時に、それに対抗する武装した国粋的団体が存在していて、すでに7年にわたって…

ウクライナ社会の裏を読む(1)ゼレンスキーは何故オリガルヒと結んだのか

バイデン米大統領は、6月10日、侵攻前にゼレンスキー大統領にロシア侵攻を警告したが、彼は「聞く耳を持たなかった」と非難した。さんざん武器を供与して戦わせておきながら、いまさら梯子を外す気かと思ったが、それはさすがになかった。しかし、ウクラ…

ロシア軍の本当のレベルはどのくらい?;状況や気分に左右されない評価が必要だ

ルハンシク州セベロドネツクの半分を回復したと、ウクライナ側が発表したかと思うと、翌日にはロシア側が同州を97%を制圧したと発表する。いったい、どっちが本当なのか分からなくなる。戦争だから両方とも「大本営発表」なのだろうか。ウクライナ東部の…

ウクライナ戦争は新冷戦に転じた;ロシアが破滅しても中国が表に出てくる

ウクライナ戦争は第3次世界大戦になりつつあると論じる人もいる。ウクライナの背後にはアメリカがいて、ロシアの背後には中国が控えているから、新冷戦といってよいという指摘もある。第3次大戦はともかくとして、すでに新冷戦あるいは第2次冷戦の様相を…

核兵器の「新しい時代」が来た?;単に本来の意味を思い出しただけではないか

プーチン大統領が、今回のウクライナ侵攻の直前、すでにロシアは核戦争すら辞さないという姿勢を見せた。それに対して世界は「単なる脅し」と捉えて、ウクライナ侵攻もあり得ないと受け止めた。しかし、プーチンは多くの誤算があったものの、ウクライナ侵攻…

ウクライナは「戦後」軍事大国になる;国内の軍勢力とアメリカの介入の賜物

アメリカはウクライナに長距離ロケットシステムの供与を決定した。少し前にはバイデン大統領が「供与しない」と明言していたのに、この急激な政策変更はどうしたことだろう。そして、こうしたアメリカによるひたすらなウクライナの軍事力強化は、これまでの…

出生率が日本より低いアジアの国々の未来;住宅問題と少子化との関係から考える

日本の少子高齢化は世界でも群を抜いているとされていたが、このところ東アジアの国々が日本を超える速度で追いついてきている。これは住宅事情によるのではないかとの説があるが、では、住宅政策を変えれば少子化は阻止できるのか。そもそも、住宅政策だけ…